最近の注目情報詳細(2014年7月)
1.道州制阻止で町村会が包囲網 自民、今国会も法案見送り
(2014年6月23日 河北新報)
自民党による道州制推進基本法案の提出は、今国会も見送られた。旗振り役の党道州制推進本部は意欲を燃やしたが、全国町村会が激しい阻止運動を展開した影響で党内の反発が強まり、合意を得られなかった。有効な打開策は見当たらず、秋の臨時国会に提出できる見込みも立っていない。
<回重ねるほど反対増>
「賛成、反対が共に3割。残り4割は明確な立場のない中間派だ」
推進本部のある幹部は4月初め、党内勢力をこう分析していた。反対派議員は少なくない。ただ「道州制推進は党の公約だ」と強調し中間派を取り込んでいけば、法案提出までこぎ着けられるとの皮算用をしていた。
ところが4月2日から始めた党内会合では、回を重ねるごとに反対が強まった。推進本部の今村雅弘本部長は「すぐに道州制を導入する法案ではない。制度を検討する会議をつくるための法案だ」と理解を求めたものの「会議をつくるだけなら法律は不要だ」といった反論が続出。賛成意見は少数だった。
4月25日の4回目の会合で、中堅の参議院議員が「地方団体が反発している。道州制の議論は終わりにするべきだ」と声を張り上げると、出席者約50人から拍手が湧き上がった。結局これ以降、会合を再開できないまま国会閉幕を迎えた。
<賛成できぬ雰囲気に>
自民党の会合が進む背後で、全国町村会は着々と包囲網を築いていた。町村会は「県の仕事が移されることになり、体制強化のため市町村合併が強制される。地方自治が衰退する」と一貫して道州制に反対の立場だ。
4月中旬には、すべての都道府県で地元選出の自民党議員を回り、法案提出への反対を呼び掛ける方針を決定。全国928の町村長に伝達し、直ちに実行に移した。
町村会の事務職員は自民党の会合を毎回傍聴し、出席議員の顔ぶれと発言内容を記録。反対意見を述べた議員には、町長らが地元事務所などを訪ね「今後ともお願いします」と頭を下げた。賛成意見を口にしづらい雰囲気が醸成されていった。
<党内風向き変わらず>
推進本部も手を打たなかったわけではない。導入を急がない姿勢を示すため法案名を「道州制国民会議設置法案」に変えるアイデアや、賛成派を動員し会合で発言してもらう作戦も浮上した。
外部の応援団として、経団連が経済活性化のため道州制が必要だと菅義偉官房長官に直談判した。だが、こうした動きも強固な阻止運動の前にはかすみ、党内の風向きは変わらなかった。
党関係者は「会合では議員が競い合うように反対意見をぶつけていた」と振り返る。地元有力者である町村長との関係がこじれれば国政選挙で不利になるとの心理から、中間派議員が反対に回る構図が鮮明になった。
今村氏は秋の臨時国会で法案提出に再挑戦する構えだ。一方、来年春に統一地方選を控え「町村長と対立するのは避けたい」という声が石破茂幹事長ら党幹部の間でささやかれている。党内合意を得るのは今後も簡単ではなさそうだ。
2.分権改革 地方活性化に欠かせない
(2014年7月14日 西日本新聞/社説)
安倍晋三首相は「成長戦略の柱は地方の活性化だ」として、景気回復が遅れている地方を重視する姿勢を示している。実現するには国だけでなく、地方の知恵と実行力が欠かせない。
自治体と住民が責任を持って地域の課題を解決できるようにする地方分権改革の重要性はますます高まっているといえよう。
とはいえ、国から地方への権限・財源移譲や道州制論議は停滞している。活力ある地域づくりに向けて分権改革を着実に進めたい。
全国知事会は、農地をショッピングセンターや住宅地などに転用する許可権限を市町村に移譲するように求める提言をまとめた。15、16両日に佐賀県唐津市で開く全国知事会議で正式決定し、国に要請するという。
農地の転用許可は現在、面積に応じて国や都道府県が担当している。ただ手続きに時間がかかるため、企業進出の支障になる例などもあるという。
地域の実情を最も把握しているのは基礎自治体の市町村である。市町村に移譲すれば、手続きが迅速になり、地域経済の活性化に役立つことも期待できるだろう。
しかし、農林水産省は、優良な農地が減る恐れがある−として権限移譲に反対している。全国知事会など地方6団体は、転用で減った農地を補うため、市町村が責任を持って耕作放棄地の再生を目指すなど実効的な対策を訴える構えだ。国は地方からの提案を真正面から受け止めてもらいたい。
国土交通省は今月、国直轄国道のうち112区間、約540キロの管理権限を自治体に移すと発表した。2018年度末までに移管する予定だが、それでも直轄国道全体では2%強にすぎない。
自治体が域内にある各種の道路を一体的に管理・運営すれば、効率的なまちづくりにつながる。移譲を積極的に進めるべきだ。
国が地方の仕事を法令で縛る「義務付け・枠付け」の見直しや国の出先機関改革など積年の課題にも取り組み、元気な地域づくりを後押ししてほしい。
3.全国知事会議「少子化非常事態宣言」
(2014年7月15日 NHK)
全国知事会議が佐賀県唐津市で始まり、地方を中心に急速に進む人口減少の問題を中心に意見を交わし、少子化対策に国と地方が総力を挙げて取り組むべきだなどとする「少子化非常事態宣言」を採択することを決めました。
今回の全国知事会議は、人口減少の問題を主要な議題に掲げ、この問題に詳しい増田寛也元総務大臣を招きました。
増田氏は、みずからが座長を務める「日本創成会議」がまとめた2040年に896の自治体で若い女性の数が半減するとした独自の推計を紹介し、「これを打開するためには、少子化対策と、東京の一極集中に歯止めをかける対策を同時に行うことが必要だ」と訴えました。
これに対し、熊本県の蒲島知事は「東京の一極集中が人口減少の原因であるなら、各県だけで対応するのは難しい。道州制の議論を、人口減少対策の観点でも進めるべきではないか」と述べたほか、広島県の湯崎知事は「高等教育を受けるほど人材が東京に引っ張られてしまう。一極集中の流れを止めるだけでなく、人口の分散を図るところまで踏み込む必要がある」と述べました。
また、地方に雇用を生み出す施策への意見も相次ぎ、福井県の西川知事が「東京より地方の法人税率を低くして企業の地方移転を促せばよいのではないか」と述べたほか、山梨県の横内知事は「国は使い勝手のいい交付金を自治体に配って、地方の創意工夫に委ねるべきだ」と主張しました。
さらに、少子化対策の取り組みを巡っては、東京都の舛添知事が「子どもの教育費が高いことが人口減少の原因としてはいちばん大きいのではないか」と指摘したほか、茨城県の橋本知事は「出会いの場が少ないという声を受けて、県で結婚支援に積極的に取り組み、毎月15件ほど成立するようになった。国もこうした支援をすべきだ」と述べました。
会議では、こうした意見も踏まえ、人口減少に対応するため、少子化対策を国家的な課題と位置づけ、国と地方が総力を挙げて取り組むべきだなどとする「少子化非常事態宣言」を採択することを決めました。