最近の注目情報詳細(2013年7月)
1.自公、道州制法案の今国会提出断念…地方に配慮
(2013年6月23日 読売新聞)
自民、公明両党は議員立法による道州制推進基本法案を秋の臨時国会に提出する方針を固めた。
今国会への提出を検討していたが、地方自治体などに道州制導入への慎重論が強く、7月の参院選への影響を懸念する自民党内の意見にも配慮し、先送りする。
自公両党が4月にまとめた基本法案の原案は、国会議員や都道府県知事らで構成される道州制国民会議を設置し、道・州の区割り案をまとめることなどを盛り込んでいる。しかし、全国町村会が「道州制導入で、更なる合併に追い込まれる懸念が払拭できない」と反発するなど、自治体には懸念が根強い。自民党内では「参院選前に強引に進めるべきではない」との声が出ていた。
自公両党が基本法案の今国会提出を目指していたのは、参院選後の日本維新の会との連携を念頭に置いたものだった。安倍首相は参院選後、憲法改正に取り組む構えで、維新の会が昨年12月の衆院選で公約に掲げるなど積極的に主張してきた道州制導入で連携することにより、関係強化につなげる思惑があった。
自民党内には、維新の会と法案の共同提出を模索する動きも一時あった。ただ、維新の会がいわゆる従軍慰安婦問題を巡る橋下共同代表の発言などで失速したことから、「連携は当面、様子見だ」との声が出ている。維新の会は21日、独自の道州制移行基本法案を、みんなの党と共同提出した。
2.道州制法案先送り「停滞ではない」総務相
(2013年6月25日 MSN産経)
新藤義孝総務相は25日の記者会見で、自民党が道州制推進基本法案の国会提出を参院選後に先送りすると決めたことについて「精力的に作業した結果、さらに議論が必要という選択肢となった。停滞や後退ではない」との認識を示した。
その上で「道州制担当相として、大改革を不退転の決意で進めていくとの思いがある。今国会の閉会後、与党で引き続き議論がなされることを期待している」と述べた。
3.導入賛否判断先送り 道州制 知事会足並み乱れ
(2013年7月10日 サンケイビズ)
松山市で開かれていた全国知事会議は9日、道州制導入に向けた基本法案に関する意見書案から「賛同できない」とする文言を削除、賛否の判断を先送りし、閉幕した。道州制は自民、公明、みんなの党、日本維新の会の4党が参院選公約で推進を明記。選挙後に議論が本格化する見通しだが、知事会議では賛否両論が噴出、首長の足並みの乱れを露呈した。
また全国市長会は同日、道州制検討会議の初会合を都内で開き、与野党の法案提出などの動きを見極めながら意見交換を続けることを確認した。小規模な市を中心に反対も根強く、当面、提言は取りまとめない方針。
知事会の意見書は、道州制件導入が地方分権の推進につながることを明確にするため、国の出先機関の廃止や中央省庁の解体再編を法案に盛り込むよう要請。制度の理念や具体像を明示し、国と地方の協議を徹底するよう求めた。
知事会副会長の上田清司埼玉県知事は閉会後の記者会見で「問題点を列挙する形となった。自民党の基本法案が提出された時点で、知事会として是非の判断をしなくてはならない」と述べた。
知事会議では地震対策強化など国への政策要望も採択。南海トラフ巨大地震や首都直下地震は新たな被害想定に基づく対応が必要として、特別措置法の早期成立や、自治体が自主的に復旧・復興事業をできるよう規制緩和や財源措置を求めた。
来年は佐賀県で知事会議を開くことも決めた。
4.関西広域連合、道州制で中間報告とりまとめ
(2013年7月11日 神戸新聞)
関西広域連合の「道州制のあり方研究会」(座長・新川達郎同志社大教授)は10日、3月から調査している道州制のあり方について中間報告をとりまとめ、発表した。
同研究会は、政府が進めようとする道州制導入について、中央集権型にならないよう問題点を整理する目的で今年3月に設置。これまでに会合を4回開いた。来年1月までに最終報告を出す。
中間報告には、河川管理や産業振興、インフラ整備などの広域的課題に対し、道州制でどこまでできるのか、広域連合では対応できないのか−などの検討経過を記載。今後の留意点として、道州制導入の大義や、府県制の限界が何かを明確にする必要がある−などとした。(岡西篤志)
☆中間報告 = http://www.kouiki-kansai.jp/contents.php?id=1169
5.[2013参院選]道州制 議論に必要な材料示せ
(2013年7月16日 秋田魁新報・社説)
参院選で道州制が焦点の一つに浮上、都道府県廃止という大変革を複数政党が提案している。しかし与党の公約では「なぜ道州制か」という基本方向が明確になっていない。「地方分権推進に何が必要か」という本質論を深めるためにも、制度の中身や課題を分かりやすく有権者に示すべきだ。
導入を訴えているのは自民、公明、みんな、維新の4党。自公両党は参院選前の道州制基本法案提出を見送り、秋の臨時国会での提案を目指す。その法案骨子案前文は「国民的な議論」を強調。道州制議論を促した地方制度調査会答申の結論部分にも「国民的論議」の言葉が3回登場している。それだけに、政治には議論の材料を詳細に示す責任がある。
しかし、道州制推進本部を設け、議論を積み上げてきた自民党の公約にしても「実現を目指す」とあるだけだ。骨子案は▽10程度の道州設置▽都道府県廃止▽国の関与をできるだけ廃止—などの概要のほか細かな点も論じているが、「現場」である地方の住民には十分に伝わっていないのではないか。
そもそも道州制は、本当に地方分権につながるのかどうか。「地方の実情に疎い」と中央集権の弊害を訴えて、分権の必要性を熱心に説いてはいるものの、「なぜ道州制なのか」をはっきりさせなければ国民的議論も始めようがない。
地方の懸念に対する対策も示すべきだ。全国知事会は基本法案への意見書で、分権実現のために国の出先機関廃止や省庁の解体再編を法案に盛り込むよう要請した。背景にあるのは、中央省庁が本当に権限を手放し、道州に移譲するのかという素朴な疑念である。
分権が大義のはずの「三位一体改革」で、分権が進まなかったのが現実だ。最近では、国が地方交付税を削減し地方公務員の給与削減を求めた。このことからも、国に地方との縦関係を解消する気はなく、権限を温存するのではないかとの不信は拭い去ることができない。
全国町村会も、道州制で設ける基礎自治体を「都道府県と市町村の権限を併せ持つ」とした基本法案の記述に敏感に反応した。基礎自治体の適正人口は20万人ほどとする考え方もあり、再び市町村合併へ踏みださなければならないのではないか、という読み方もできるためだ。
さらに、州都と近辺が繁栄する一方、それ以外の地域が活力を失うとの懸念もある。市町村合併で周縁部の衰退を経験した地方で特に根強いようだ。
こうした懸念を払拭(ふっしょく)して分権を実現することは本当に可能なのか。議論が本格化する直前の国政選挙にもかかわらず、十分な判断材料が有権者に示されているとは言い難い。「なぜ道州制か」への明快な答え、分権の実現可能性、懸念への対策がしっかりと説明されなければ「国民的議論」にはならない。