最近の注目情報詳細(2013年2月)
1.政権交代で宙に浮く 九州広域行政機構
(2013年1月20日 大分合同新聞)
地方分権改革で国の出先機関の受け皿として九州地方知事会(会長・広瀬勝貞知事)が提唱している「九州広域行政機構」(仮称)の実現が、政権交代で宙に浮いている。「地域主権」を掲げた民主党政権下で関連法案策定までこぎ着けたが、政権を奪還した自民党は出先機関の地方移管に否定的。安倍政権がどう対応するかは不透明だ。知事会は引き続き実現に理解を求めるが、道のりは険しくなっている。
広域行政機構は九州各県などで設立。九州地方整備局(国土交通省の出先)など3機関の権限、組織、人員を丸ごと引き受け、より地域の意見を反映させた事務事業をスピーディーに実施する構想だ。
自民党は昨年の衆院選の政権公約で民主党政権が進めてきた出先機関改革の取り組みに反対を表明。地方分権の分野では都道府県を再編する道州制の実現を掲げた。背景には全国の市町村の一部が、都道府県の権限強化や大災害時の出先機関の対応力低下を懸念し反発していることもある。
これに対して知事会は「出先機関の移管は2007年の第1次安倍内閣時代の地方分権改革推進委員会で審議されてきた」などと訴え、議論を進めるよう求めている。
広瀬会長は17日に分権改革を担当する新藤義孝総務相と面談した。県によると、分権に関する方向性で新政権と大きな違いがないことを強調。新藤総務相は「自民党の考えを踏まえ、議論しないといけない」などと応じたという。
知事会は「機構が否定されたわけではない。国の出方、提案を待つしかない」(事務局)と受け止める。
安倍政権は景気回復を最優先課題としており、今後の分権改革の議論が動きだすのは13年度政府予算成立後とみられている。
<ポイント>九州広域行政機構
民主党政権が国の出先機関原則廃止を打ち出した2010年の「地域主権戦略大綱」に基づき、広瀬知事らが中心となりまとめた。知事ら首長でつくる執行機関と県議会代表らによる議決機関を設け、三つの出先機関の事務を受け入れる。野田政権は衆院解散直前の昨年11月に出先機関改革法案を閣議決定した。
2.関西広域連合が道州制有識者研究会 中央集権を防ぐ監視機能も
(2013年1月25日産経ニュース)
関西広域連合(連合長=井戸敏三兵庫県知事)は24日、大阪市内で会合を開き、昨年の衆院選で自民、公明や日本維新の会など、道州制導入を目指す政党が躍進したことを踏まえ、2月にも道州制導入に関する有識者研究会を発足させることを決めた。
■「イノベーション特区」事務局も一本化
関西広域連合の首長では、維新幹部の松井一郎大阪府知事や橋下徹大阪市長らが道州制推進を唱える一方、井戸氏は「単なる都道府県合併は逆に中央集権化が進む」などとして、反対の立場を示していた。
会合で井戸氏は「(道州制を)国だけで進めるのではなく、広域連合の立場から検討し、地方の主体性を明確にする必要がある」と述べ、政権が目指す道州制が地方分権の流れに逆行しないよう、研究会に監視機能を持たせる考えを強調。「広域連合としても提言しなければ、中央集権型の道州制になりかねない」と警戒感をあらわにした。
会合では「関西イノベーション国際戦略総合特区」の推進強化を図るため、広域連合と関西経済連合会(関経連)にそれぞれ設置している事務局を一本化することも決めた。
3.首相、道州制法の早期制定目指す
(2013年1月31日 共同通信)
安倍晋三首相は31日の衆院本会議で、道州制の導入を定める「道州制基本法」の早期制定を目指す考えを示した。「早期制定を目指して議論を行う与党と連携を深めて取り組む」と明言した。国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約についても「早期締結を目指す」と述べた。米国は日本の早期加盟を要請しており、2月下旬で調整している日米首脳会談でも議題に上るとみられる。
4.分権後退の懸念 「逆コース」をたどるな)
(2013年2月3日 毎日新聞:社説)
安倍内閣の発足以来、分権改革の行方が懸念される状況だ。国の地方出先機関の地方への移譲は宙に浮き、民主党政権下で創設された使途のゆるやかな一括交付金制度も廃止される。
公共事業の大盤振る舞いで中央官庁の補助事業が勢いを取り戻すなど、このままでは分権の流れと逆行する中央の統制強化に回帰するおそれがある。民主党のみならず日本維新の会、みんなの党など野党側は結束して監視を強めるべきだ。
安倍内閣の発足後、政府は内閣府の「地域主権戦略室」をかつての名称の「地方分権改革推進室」に戻した。もともと自民党は「地域主権」という用語を批判してきただけに、政権再交代を印象づけた格好だ。
名称が変わっても、分権改革に熱心に取り組むのであれば問題はない。だが、民主党政権時代の施策を否定しようとするあまり、改革が逆戻りする気配がある。
たとえば国の出先機関の自治体への移譲は野田前内閣がまとめた法案が宙に浮き、改革自体が頓挫しかねない。さきの衆院選公約で自民は出先機関改革に慎重姿勢を示した。だが、都道府県を再編、強化する「道州制」を目指しているのであれば出先機関の地方移譲は最低限、越えねばならないハードルのはずだ。
一括交付金制度も来年度から廃止され、国土交通省などタテ割り官庁別の補助金となる。同制度には自治体側から使い勝手の悪さなどに批判もあったが、「ひもつき補助金」による中央の統制をゆるめる狙いがあった。使途が自由な一般財源化ならまだしも、タテ割りの補助金に戻すような発想を疑う。
今国会で審議される大型補正予算案や来年度当初予算案で、自治体は公共事業攻勢の担い手となる。緊急経済対策では1.4兆円もの地方負担を国が肩代わりし、地方公務員の給与カットの見返りとして防災、減災名目で単独事業を行う枠組みもできた。補助事業を通じ国、地方の上下意識が強まったり、公共事業ラッシュで自治体の財政規律がゆるんだりしかねない。
野党側は厳しく政府の姿勢をただすべきだ。維新の会の橋下徹共同代表は民主党政権下の地域主権戦略会議に大阪府知事などの立場で参画した。みんなの党も分権を最重視している。安倍内閣に対するスタンスを決めるうえで重要な問題のはずだ。
安倍晋三首相が最初に政権に就いた1次内閣は地方分権改革推進委員会の設置など、分権への積極姿勢も目を引いた。政府が取り組む分権改革の多くのテーマはその延長線上にあることを首相は忘れないでもらいたい。
5.関西広域連合、国民会議に参加要望へ 道州制で井戸氏
(2013年2月9日 神戸新聞)
関西広域連合議会の総務常任委員会が9日、大阪市で開かれた。井戸敏三連合長(兵庫県知事)は、安倍政権が導入に意欲を示す「道州制」のあり方を検討するために設置するとされる「国民会議」に、同連合も参加して意見が言えるよう求めていく考えを示した。
広域連合は1月の首長会合で、政府主導の道州制論議に対抗するため、制度の課題を検証、提言する有識者研究会の設置を決めている。この日の委員会でも「道州制の議論は、全国で進もうとしていた広域行政の動きに冷や水をかけた。今頑張らないといけない」(山口信行兵庫県議)など政権や与党への働きかけを求める声が相次いだ。
井戸連合長は研究会の設置について「道州制を進めるためでなく、対抗し理論武装するため」と強調。「府県を超えた行政主体は関西広域連合だけ。『国民会議』に入れてもらうよう政府に働きかけたい」と述べた。
(岸本達也)
6.道州制の基本法制定に向け 推進連合が国に取り組みを要請
(2013年2月12日 MSN産経west)
全国を複数のブロックに分ける道州制の実現を目指す「道州制推進知事・指定都市市長連合」(共同代表・村井嘉浩宮城県知事、橋下徹大阪市長)が12日、2回目の総会を東京都内で開き、地方の声を反映した道州制の早期実現を求める要請文をまとめた。
要請文では道州制を「地方分権の究極の姿」と位置づけ、国に対し、制度設計に向けた積極的な取り組みを求めた。
また総会では、道州制についての国民的な議論を喚起するため、各政党が道州制の考え方を表明する意見交換会を3月31日に都内で行うほか、7月の参院選前に、各政党に対し道州制の推進を公約に盛り込むよう求めることを確認した。
総会終了後、橋下市長は「安倍政権の一番弱いところは地方分権。(日本維新の会としても)エネルギーを割いて追及していきたい」と述べた。
橋下市長と村井知事は1月25日に大阪市役所で会談し、「制度論より法整備が必要」として、実現に向け国へ働きかけを強めることを確認。道州制をめぐっては、自民党やみんなの党が議員立法で基本法案を提出する方針を示している。