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1.道州制導入 国家を大転換(御手洗 冨士夫)

20241月18日 日本経済新聞

【昭和99年 ニッポン反転 インタビュー @】

 

 このまま日本がずっと変わらずに21世紀を終えたらどうなるだろうか。活力を失った日本は、地球の田舎の国になるだろう。ここで国家的ブレイクスルーをしなければならない。国の構造を根本から変える蛮勇を振るうときだ。

 2006年に経団連会長に就いた後、日本を変える改革として訴えたのが道州制だった。道州制の導入は税制や大学、電子政府推進の改革にもつながる。

 道州制によって地方に真剣に国を開拓してもらう。現行の地方交付税は県の財政を維持できるが、発展をにらんだ財源ではない。日本を10程度のブロックにくくり直し、県を開放し、道州同士で発展を競わせる。

 米国の独立した州のように道州が自主性を持ち「経営」できることが肝要だ。そのために道州に徴税権を与える。外交などは国が担い、行政のほとんどの実行は地方に任せる。財源の候補は消費税だ。消費税が道州ごとに差が大きければ、国が調整すればよい。

 道州が独立していれば、地方の中都市への工場誘致が活発になる。例えば、道州は10年間、法人税を徴収しないインセンティブを企業に与えられる。中長期ではその分を住民税で回収できる。

 道州制は大学改革にもつながる。資金を特徴ある分野に重点配分して、専門性のある学部の国際競争力を高めれば、世界の俊英を集められる。道州制の導入に併せて、日本の国公立大を再編・統合すれば、世界に冠たる大学を育てられる。

 国民生活に望ましいことは、国を豊かにすること。その基礎は成長力だ。経済的に豊かになる以外に方法はない。潜在成長力を高める政策に知恵を集めるべきだ。

 進歩するには変身しなければならない。変身は前進だと覚悟を決めるときだ。

(キャノン会長兼社長 御手洗冨士夫氏)

 (聞き手 星正道)