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1.「政党の公約を全く重視しない国民性」が招く日本政治の恐ろしい末路
(2022年10月19日 幻冬舎GOLD ONLINE)
元通産省官僚・株式会社二十一世紀新社会システム研究所代表である、本田幸雄氏の著書『劇症型地球温暖化の危機 太陽光エネルギー革命で日本を再生する』(幻冬舎ルネッサンス新書)より一部を抜粋・再編集し、「日本の民主政治」について見ていきます。
■「政党の公約を全く重視しない」日本人の国民性
2006年に第一次安倍内閣で、自民党は「2018年までに47都道府県を廃止し、約10の道州に再編する」と公約していました。
2012年に自民党が政権復帰すると再び『道州制基本法』の早期成立を図り、「その制定5年以内の道州制導入を目指します。導入までの間に、国、都道府県、市町村の役割分担を整理し、住民に一番身近な基礎自治体(市町村)の機能強化を図ります」(2012年の自民党のマニフェスト)と公約していましたが、安倍長期政権は一向に動くことはありませんでした(政党の公約、マニフェストを全く重視しない日本人の国民性が、日本政治を堕落させてしまいました)。
選挙公約やマニフェストは選挙上の建前、実際にやることは安倍首相の胸の内、憲法改正と一連の「戦後レジームの総決算」政策と森友、加計、桜見、オリンピックで最後が新型コロナのアベノマスクで9年間(菅内閣の一年を含めて)、国会を空費しました(江戸幕藩体制は250年続きましたが、最後は黒船の出現でとどめを刺されました。江戸幕府の官僚たちは黒船が迫っていることに気づきませんでした。現在の幕藩体制の官僚たちは劇症型地球温暖化が迫っていることを全く意に介していません)。
実際、各種世論調査「政府に何をやってもらいたいか」で毎回、上位になる「年金問題」「医療福祉問題」「少子化対策」「財政再建」……などは無視・先送りされ、世論調査でいつも7位か8位の下位の3〜5%程度にしかならない「憲法改正問題」が最優先され、国民の思いと政治がこれほどかけ離れたことはありませんでした。
(その最大の理由は小選挙区制と野党の分裂、つまり、自民政権を支えることにしかならない疑似野党政党の多発でしょう。中選挙区制から小選挙区制に変える時、議論されましたが、小選挙区制では、二大政党でなければ原理的に政権交替は起きません。ガリバーと6人の小人では、百年河清を待つです。
情報時代という背景もあります。今のメディアを使えば、小さくても一党一派の党首として自己満足できるのです。そこには国がどうなるか、どうするかという観点が抜けています。野党同士を説得できない政治家が、どうして国民を説得できるでしょう)
■「12.5%で政権を握れる」田中角栄が豪語したワケ
中選挙区制時代、田中角栄・元首相は日本では12.5%で実質、政権が握れると豪語していました。
当時、自民党は派閥全盛の時代で8個師団の派閥がありました。角さんの理論では、総選挙で2分の1をとれば、自民党政権になれる、その2分の1をとれば、主流派になれる。その主流派の2分の1を握れば、つまり、12.5%を握れば、日本の政治権力を握れると言っていました(彼は政治的勘で本音を言い、それを実行していました。良くも悪くも)。
しかし、この時代は結果よしでした。自民党内閣が失敗すると自民党の反主流派が必ず、それを理由に主流派を倒し、政権交代となり、それなりに政治は是正され、結果、オーライでした。
また、バブルがはじけるまで日本は欧米の後追いでしたから、中央官庁の官僚が立てる政策も欧米の追いつけ追い越せ政策で一致していましたから、ブレがありませんでした。
結果を見ると日本は効率よく高度経済成長を遂げたのです。
問題はバブルがはじけてからでした。ちょうど、平成年間に入り、日本は少子高齢化が本格化してきてからです。
その時、小選挙区制になって自民党は一選挙区一人の公認となり、小泉、安倍と続きましたが、俄然、自民党は総裁(江戸時代の将軍になったのです)の力が強くなりました。
すべての衆参議員(全国300藩の世襲の大名と同じ)は総裁に頭が上がらなくなり、モノも言えなくなりました。総裁選挙に参加する自民党員は113万人(年会費4000円)で日本国の1%にもなりません。同じ一党支配の中国では、人口14億人、共産党員が9000万人で国民の6%です。
日本では1%にもならない国民で実質、総理(将軍)を決めていることになります。政党政治、民主政治が形骸化していると言わざるを得ません。
安倍首相は2014年に内閣府人事局を作り、中央官庁の主要幹部の人事を一手に握り、官僚組織も総理とその取り巻き連に対して忖度させるようにしました(戦後、長い自民党政権時代にも、時々、時の政権に職を賭して抗議する官僚がいましたが、安倍政権によって完全に忖度官僚にされてしまいました)。
日本型権威主義政治(平成幕藩体制)の誕生です。首相公選制などの改革をしないと日本の民主政治は本当に形骸化されてしまいます。
しかし、平成30年間、選挙区議員定数削減一つできない現政治に、そのような政治改革ができるはずはありません(政権政党に政治制度改正をゆだねること自体が間違っています)。これも先送りです。
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本田 幸雄
1942年、島根県生まれ。東京大学工学部機械工学科卒業。通産省入省、重工業局、資源エネルギー庁、工業技術院、(文部省出向)長岡技術科学大学教授、通産省機械情報産業局、中国通産局長。
通産省退職後、医療福祉研究所、(財)愛知国際博覧会協会などを経て、現在、(株)二十一世紀新社会システム研究所代表。
著書に『21世紀の社会システム』、『水田ハ地球ヲ救ウ』、『ベンチャービジネス成功への決定的条件』、『西暦2000年への選択』(監訳)、『地球白書』(監訳)、『21世紀地球システムの創造』(共著)など。