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1.【解剖 政界キーマン】松井一郎・日本維新の会代表 都構想と憲法改正、したたかな戦略
(2019年5月18日 zakzak )
選挙で圧勝したにもかかわらず、驚くほど謙虚な言い回しだった。
「(大阪都構想は)反対派の人の声も丁寧に聞く」
日本維新の会・大阪維新の会代表で、大阪府知事だった松井一郎氏が、4月の統一地方選で仕掛けたのが、「府知事と市長のダブル選」とともに、府・市両議会選挙との同時選挙だ。
大阪都構想の住民投票をめぐり、維新と公明党は2017年4月、「(松井氏の19年11月までの知事)任期中に実施する」との合意を交わしたが、公明党側が拒否したのがきっかけだ。
「もう一度、有権者の声を聞く」として、松井氏と吉村洋文市長が同時辞職し、知事選と市長選に入れ替えて出馬した。そこには、松井氏の戦略があった。
「都構想実現の住民投票をやるには、府・市両議会の賛成が必要であり、維新が両議会で過半数をとる必要がある。大阪の人々に『都構想の必要性』を訴えるためにも、『ダブル選』を仕掛けて風を吹かせようとした」(維新府議)
結果、府議選では維新が単独過半数をクリアし、市議選でも過半数に2議席まで積み上げた。当初の予想からすれば大勝利といえる。
「選挙戦では『都構想の必要性』を訴えながら、公明党や自民党の既成政党を『改革の抵抗勢力』に位置付けた。仮想敵をつくる松井氏の得意の手法だ」(同府議)
今後、松井氏が描くシナリオについて、維新幹部の大阪市議はいう。
「市議会の残り2議席は無所属議員を一本釣りすれば達成できるが、松井氏は『都構想で相談する相手は公明党だ』と言っている」
なぜか。
「公明党は、大阪では組織力を持った一大勢力だ。今後、公明党とうまくやっていった方がプラスになる。公明党は次期衆院選で現職がいる小選挙区に維新の対立候補を立てられたくない。『都構想に協力する』と折れる可能性がある。松井氏らしい計算だ。勝利後の会見でも高圧的にならず、公明党に『話を聞くよ』と呼びかけた」
盟友で外野にいる橋下徹元大阪市長が「松井さんは公明党を潰す勢い」などと過激な発言をしているが、「公明党を手のひらに乗せる役割分担」(前出市議)という。
私は「大阪ダブル選」の翌日、テレビの報道番組で、松井氏に対して「大阪都構想の先にあるのは道州制だが、自民党政権は霞が関と組んで中央集権を崩さない。官邸とケンカしないと道州制はやれないのでは?」という趣旨の質問をした。
すると、松井氏は「道州制はやる。憲法に書き込めばいい。そのためには安倍政権と交渉する。(憲法改正で自衛隊明記の9条案を)のむ代わりに、道州制を書き込ませる」と語った。
次元も質も違うこのバーターは、物議を醸す可能性がある。しかし、お構いなしだ。松井氏の手法と維新の存在が、再び国政を揺るがしそうだ。
(ジャーナリスト・鈴木哲夫)