最近の注目情報詳細2017年10月)

 

 

1.「関西広域連合、国会議員も兼務を」 井戸連合長

20171011日 神戸新聞)

 関西広域連合長の井戸敏三・兵庫県知事は11日、大阪市内であった関西プレスクラブの会合で講演し、構成府県・市の議員代表が兼務する広域連合議会議員について、私見と断った上で「国会議員による兼務も検討課題」と語った。

 

 また、「憲法改正論議の一つに地方自治を加え、住民自治や自主財政などを明確に位置付けてほしい」ととも述べた。10日公示された衆院選に合わせ、停滞する地方分権改革に一石を投じる狙いとみられる。

 

 井戸知事は「人口が増えない成熟社会で地域が個性を発揮するため分権型行政が必要」と強調。広域防災や産業振興などの実績を示した。

 

 しかし、2010年の発足当初から求める国の出先機関の「丸ごと移管」は実現せず、「国との関係で地方自治の将来像が描けない」と指摘した。一方、府県から道州制への再編には反対の考えを重ねて示し「連邦制など欧州の制度も参考に、今後の広域行政の在り方を検討している」と説明した。

(内田尚典) 

 

 

2.衆院選埋もれた争点 三都物語で掲げた「地方分権=憲法8章」改正の意味は?

20171013日 TAE PAGE)

 10日に公示された衆院選では安倍政権の継続、消費増税の是非などが主な争点として各党の論戦が始まっています。この選挙で台風の目になると見られた「希望の党」は公約で「地方分権」の推進を強調、憲法改正も地方自治に関する「第8章」の改正を前面に打ち出していました。

 

 しかし、結党後の党の失速感や東京、大阪、愛知が連携する「三都物語」の不協和音とともに、争点としては埋もれてしまっているようです。一体どうなってしまったのか、その理由と意味を考えてみましょう。

 

2項目で地方分権に触れた「希望」

 

 希望の党は政策集で2項目にわたって地方分権、憲法8章改正に触れています。

 

 「地方に希望を」と題した項では、「地方自治に関する憲法第8章を改正し、『地方でできることは地方で』行うとの分権の考え方、課税自主権、 財政自主権などを位置付ける」のほか、「道州制導入を目指し、国の権限と財源を移していくことにより、道州レベルで、また世界レベルで競争するダイナミズムを創りだす。まずは公共事業に関する権限と予算を地方移管する」「政令市が都道府県からの独立性を強める特別自治市の実現を図る」などと明記しています。

 

 また、「憲法に希望を」の項では、上記の憲法8章改正を第一に再掲し、「原発ゼロ」や自衛隊の位置付けよりも強調。小池代表も106日の公約発表時、憲法改正について「これまで護憲か改憲かの議論だけで議論そのものも深まってこなかった。国民の知る権利や第8章の地方分権を明記すべき」と述べていました。

 

「第一声」で触れなかった小池代表

 

希望の党の公約では「一院制」のあり方が、大村知事の主張する「地方代表の参画」とまでは定義されていないなど、細かな違いが見られます。また冒頭で指摘したように、実際の選挙戦略は地方分権が「ファースト」どころか二番手、三番手にもなっていないのは明らか。小池代表の公示日の第一声では、一言も触れられませんでした。

 

自民党は草案つくるも争点化せず

 

 一方、政治の側からは自民党が近年の改憲草案で第8章の見直しも進めています。2012年の草案では、地方公共団体を「地方自治体」と言い換えた上で、道州制を前提に「基礎自治体」と「広域地方自治体」に区別。財政は「地方税その他の自主的な財源をもって充て」、それだけで不十分な場合は、国が「法律の定めるところにより、必要な財政上の措置を講じなければならない」などとしています。

 

 しかし、今回の衆院選の公約で自民党は、憲法改正について「自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、参議院の合区解消など4項目を中心に」議論するという文言にとどめました。地方のあり方についてはここ数年来の「地方創生」という言葉に集約しているため、希望の党の公約との単純な比較はできません。それも議論が盛り上がらない一因と言えるでしょう。

 

 憲法学者で元愛知大学教授の小林武氏は、「希望の党と大村知事の持論との関係など詳しいことは分からない」ことを前提に、次のように指摘しました。

 

「立法権は93条で、財政権や課税自主権自体は94条の解釈で認められているというのが憲法学の立場。大村知事が求める『国と地方の協議の場』であれば1999年の地方自治法改正で『国地方係争処理委員会』ができているなど、憲法改正以前の地方自治法マターの話がかなりある印象だ。道州制も法律移行でできることだが、もし連邦制のようなところまでいくなら国家構造を変える大改正になり、レベルの違う話になる。選挙の争点とするには、もっと論理的な準備が必要なのではないか」

 

 地方の活性化や財政再建が喫緊の課題であることは疑いがありません。しかし、「8章」が「9条」に優先するほどの改憲課題かというと、一般の有権者にとってはなかなか実感しにくいはずです。22日の投開票までに、どれだけ議論が深まるでしょうか。

(関口威人)

 

 

3.道州制に「イエス」と言えないのは

20171014日 あらたにす)

 今日の新聞で各党の公約を読んでいたのですが、引っかかったのは「道州制の導入」です。希望の党と日本維新の会がそれぞれ掲げています。国の権限と財源を地方へ移し、地域を元気にするというのが両党の言い分です。

 

 道州制をめぐる議論は多岐にわたりますが、基本的には、都道府県を廃止して全国をいくつかの区域に分割するアイデアです。2013年に国会への道州制法案の提出(日本維新の会・みんなの党)があり、14年にも道州制基本法(自公案)の提出を模索する動きがありましたが、「地域間格差が拡大する」などの反対意見も多く、実現には至っていません。

 

 私が道州制に「イエス」と言えないのは、間違いなく市町村合併が促進されるからです。地域政治に詳しい教授は、合併によって議会や執行機関と住民との距離は遠くなり、住民自治が衰退する懸念があると講義で話していました。

(齊藤 奏子)

 

 

4.地方の自立促す具体策競え

20171015 日本経済新聞・社説)

 安倍政権が地方創生を掲げ、2014年末に総合戦略を策定してから3年近くたつ。雇用情勢を中心に地方でも景気は上向いているが、現状をみる限り、政策効果が十分に上がっているとは言い難い。

 

 政府は総合戦略のなかで、5年間で地方の若者雇用を30万人分創出し、東京一極集中を是正する目標を掲げた。具体的には当時、年間で10万人程度だった東京圏への転入超過数を、20年にゼロにする方針を打ち出している。

 

 しかし、16年の実績をみると11万8千人と、一極集中の流れはまだ変わっていない。企業の本社機能の地方移転は思うように進んでいないし、政府機関をみても文化庁の京都移転などが決まった程度にとどまっている。

 

 文部科学省は新たに東京23区における私立大学や短大の定員増を原則認めない方針を打ち出したが、地方大学の魅力を高めることが先だろう。若者の東京圏への流入は大学入学時よりも卒業後の就職時の方が多い。

 

 安倍政権の5年間で、地方分権の優先度が低下した点も気がかりだ。政府は有識者会議を設けて一応、分権改革に取り組んではいるが、取り上げるテーマはこまごました内容ばかりだ。

 

 分権なくして地域の自立はあり得ない。安倍政権は政権発足時には道州制基本法の制定を掲げていたが、今は棚上げしている。

 

 各党が掲げた衆院選の公約をみると、希望の党が道州制の導入を明記している点が目を引く。道州制をかねて主張している日本維新の会との連携が狙いなのだろう。

 

 しかし、希望の党の候補者の中心は民進党出身者だ。民進党は旧民主党時代に道州制を否定していただけに、ふに落ちない。

 

 訪日客が増えるなど地方経済にも明るさはみえるが、地方の人口減少はこれからも続く。持続可能な自立した地域をつくり上げるには何が必要なのか、各党は具体策を競い合ってほしい。