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1.オール九州で産業政策を  有識者に聞く<5>中部大学教授 細川昌彦さん

2017年8月15日 読売新聞/九州)

――九州の産業をどうみているか。

 

 「北部九州に自動車や半導体関連産業が集積してきた。ただ、この業界はこの先10年で、技術進歩により転換期を迎える。重要な産業だが、過度に依存すべきではない。九州には工場などが立地したが、メーカー本社があるわけではなく、決定権がないので、構造変化が起こると下請けを含め振り回される可能性が高い」

 

 「培った資産を生かしながら、世界の潮流に合わせて産業構造をどう変化させていくかを考えなくてはならない」

 

――今後、成長が期待できる分野は。

 

 「介護ロボットのほか、ヘルスケア産業、温泉を活用した高齢者向けの保養観光などに可能性があるのではないか。介護や福祉の先進地域になり、世界最大の展示会を誘致すれば、交流人口も増やせる」

 

――世界的な競争に対応すべきだと主張している。

 

 「日本の都市は、国内の他都市との比較で目標を作るケースが多い。だが、それでは世界から取り残される。グローバル化の中、競争相手はアジアなどの都市。指標はシンガポールや中国の深しんセンなどにするべきだ」

 

――九州の問題点は。

 

 「県や市などで単独の産業政策をつくり、同じようなことをしているのは問題だ。経済圏を考えるとそれでは小さすぎるし無駄が多い。企業や人材にとって県の境界は意味を持たない。福岡市は創業で、北九州市は介護ロボットなどで政府の国家戦略特区だが、なぜ、九州全域で特区申請しないのか。東京圏や関西圏は、圏域を特区にしている」

 

 「米国のワシントンと周辺は州をまたいで連携して企業や人材を誘致し、ハイテク産業の集積を進めている。欧州やアジアも同じだ。オール九州で産業政策を進めなければ戦えない」

 

――どう実現すべきか。

 

 「広域連携は会議を開くだけでやった気になっていては駄目だ。九州は観光では、各県と民間による『九州観光推進機構』という、全国でも珍しい事例がある。産業政策も官民で専門組織をつくるべきだ」

 

 「各県や福岡、北九州両市などからエースの職員を派遣し、民間の知恵も入れ予算も付ける。組織、ヒト、予算をそろえれば必ず動き出す。そこで九州の産業の将来構想を示してほしい」

 

――九州への期待は。

 

 「九州は島で、まとまりやすいのに生かし切れていない。もったいないことだ。(都道府県を再編する)道州制が制度化されなくても、九州は単独でできることを進められる。九州全体を特区にして、戦略的に産業政策にチャレンジする取り組みを期待したい」

 

 

細川昌彦氏 1977年東大法卒、通商産業省(現経済産業省)入省。2003年に中部経済産業局長に就任。名古屋市を中心とした半径100キロ圏で、経済交流を促進する「グレーター・ナゴヤ」を提唱した。09年から現職。著書に地域間競争を分析した「メガ・リージョンの攻防」など。大阪市出身。62歳。