最近の注目情報詳細(2017年1月)
1.安倍政権4年実績評価について
(2016年12月31日 言論NPO代表 工藤泰志ブログ)
言論NPOは2004年から、定期的に政権の実績評価、選挙時のマニフェスト評価を行ってきました。私たちが、政権の通信簿といえるこうした評価作業に毎年、取り組んでいるのは有権者と政治との間に緊張感ある関係を作り出そうと考えているからです。
市民が強くならなくては、民主主義は強く機能しないと私たちは考えています。選挙は市民が政治に参加する重要な機会であり、政党はこの国が直面する課題解決のためにプランを提示し、その実行を約束する必要があります。有権者はそれを判断し、その実行を監視し、その成果を次の選挙で判断します。政党が課題解決で競争し、それを有権者が判断する。そうした課題に挑む、緊張感ある国民に向かい合った政治こそが、強い民主主義なのです。
私たちが評価を行っているのは、政権が選挙時の公約や、日本の課題にどのように取り組んでいるのかを有権者が判断するためです。そのための判断材料の一つとして多くの人に活用していただきたいのです。
こうした言論NPOの強い思いを多くの人たちに共感いただき、今回も多くの専門家の方に評価作業に参加してもらいました。実際に評価作業に参加していただいた約60氏の専門家の中から名前の公表を許諾していただいた25氏のみを公開させていただきます。(省略)
また、そのほかにも200人を超える専門家の方々に各分野の評価のためのアンケートに参加していただきました。アンケート結果は別に説明させていただきます。
さて、2012年に誕生した第二次安倍政権の実績評価は今回で4回目となります。今回の評価は、2012年、2014年の衆議院選挙での政権公約、参議院選挙の公約などをベースに、安倍政権が重要視している公約内容を選定し、300氏近い専門家が座談会、ヒアリング、アンケートなどを通じて評価作業に参加し、それらを総合して評価を行いました。
5点満点で2.7点の得点は昨年の3回目の評価とほぼ同じですが、評価する60項目で昨年と同じものは25項目に過ぎず、それぞれの項目が、状況の変化や参議院選挙の公約などを判断し、変更されています。
2.7点という点数は歴代政権の評価と比べても高得点だと判断できます。その要因として、第二次安倍政権が長期安定政権になり、首相自身が成果を意識して課題に取り組んでいることが挙げられます。
また、外交・安全保障の8項目の平均が3.4点と昨年に続き大きく寄与しています。政権の長期化で60の評価項目のうち進捗がみられる項目も多く、課題解決の方向に動いているが、現時点では判断できない(3点)項目も30個(前年から3個増加)となっており、点数を下支えしています。
ただ、政権の長期化で課題解決に向けた本格的な評価も可能となり、我々の評価の軸もアウトカム(成果)を意識したものになり、個別の評価はかなり厳しいものとなっています。
4年間で実現の方向に動いているもの(4点)は6項目(前年から2項目減少)にとどまり、実現を断念(1点)したり、困難だという項目(2点)は24項目(前年から1項目減少)に及んでいます。こうしたうまく進んでいない政策について、国民に対する具体的な説明がなされていないことも我々は重視しています。
第二次安倍政権が当初から掲げているアベノミクスについては、掲げた目標の実現が困難だという評価になっており、目標自体が形骸化しています。財政再建も見通しは描かれておらず、目標の実現は困難だという判断に今回も改善はありません。今年の参議院選挙で延期した消費税の引き上げや、軽減税率の導入に関しては、安倍首相がその実現を示しているために、状況を見守るという判断を今回も採用しています。しかし、昨年の評価でも、状況を見守るということになっていましたが、こうした我々の評価は、その後、見事に裏切られ、強い決意を示していたにもかかわらず、参議院選挙では「新しい判断」として消費税の引き上げを再延期してしまったことには、注意する必要があります。
安倍政権のこの一年は、新三本の矢に見られるように、同一労働同一賃金による正規と非正規の格差是正、介護離職ゼロなど、まさに今、日本が直面している課題への取り組みを強めています。これらの課題認識自体は適切であり、個別では進捗も見られます。しかし、それらの課題は、相互連関しているものであり、日本の将来ビジョンを描いた上での抜本的な構造改革に、踏み込む形にはなっていません。
また、トランプ大統領の誕生や欧州での反自由や民主主義への挑戦など、世界は大きく動き始めています。TPPや外交政策での公約実現はこうした変化にも影響を受け始めています。一方で、真の行政改革や道州制、地方分権など統治構造に関わるものは実質的に取り組んでいません。日本に迫る課題が切迫しており、余裕がないというのであるならば、その修正や今後の立て直しを国民に説明すべきだと考えます。
評価基準に関しては別に説明していますが、公約を課題解決のプランとしてその進捗を評価しており、修正やうまくいかない時、あるいは選挙時には全く説明していないもので新規で動き出した政策では、国民への説明が十分かも判断しています。今日公表した60項目の評価ではその内容も可能な限りわかりやすく説明しています。
また、こうした評価作業をもとに言論NPOは毎日新聞と協議して最終的な採点を行っています。私たちは2004年から、メディアこそが有権者側に立ってこうした評価を行うべきと提案してきましたが、日本のメディアでは唯一、毎日新聞が4年前から私たちの要請に賛同し、作業を協働していただいております。
今回の評価結果を通じて、有権者自身が日本の課題を考える一助になれば幸いです。
2.関西広域連合、挫折の6年 政権や省庁に翻弄され
(2017年1月5日 神戸新聞)
関西広域連合の6年間の歩みは、時の政権や官僚組織などに翻弄(ほんろう)される挫折の繰り返しだったといえる。存在意義である地方分権改革の停滞で、広域連合の存在感も低下している。
最大の好機は、出だしの数年間に訪れた。広域連合が発足する前年の2009年8月の衆院選で「地域主権」を掲げた民主党(当時)が絶対安定多数を超える308議席を獲得。翌9月に社民党と国民新党(当時)との連立政権が誕生した。広域連合は10年12月の発足と同時に「国出先機関対策委員会」を設置し、責任者の委員長に橋下徹大阪府知事(当時)が就いた。
同連合を「道州制へのステップ」と捉える橋下氏と、道州制に慎重な連合長の井戸敏三兵庫県知事とで意見の対立を抱えながらも、分権推進では一致。発足の約2週間後に橋下氏が政府の会議に出席し、持ち前の突破力で、連合への国出先機関の「丸ごと移管」を迫った。
東日本大震災を挟んで国の動きが鈍ったが、要請や提言を重ね、11年10月に民主党の野田佳彦首相が移管実現のための法案提出を明言すると、橋下氏も「政治家が号令をかけないと省庁は動かない。感動した」と評価した。
だが、既存の国出先機関が廃止・縮小されることについては、各省庁のほか、市町村も「大規模災害に対応できない」などと反発。法案提出は先送りされた。12年11月にようやく閣議決定にこぎ着けたものの、直後の衆院選で民主党は惨敗し下野した。政権復帰した自民党は民主党の方針を踏襲せず、丸ごと移管の機運は大きく後退した。
安倍政権は14年度から、国に移譲を求める事務・権限を自治体側から提案する「提案募集方式」を導入。ただ関係省庁が「対応不可」とするケースが多く、「目に見えて進んだのは(大臣許可が必要だった)農地転用許可権限の都道府県への移譲くらい」(井戸知事)と改革とは程遠い。
15年には地方移転を希望する政府機関を公募したが、同様に多くの省庁が難色を示し、昨年発表の対応方針では、全面移転は京都への文化庁のみだった。
北陸新幹線の未着工ルートやリニア中央新幹線の開業時期を巡っても、国などへの要望が実現せず砂をかむ。
東京一極集中の是正に対する政権の本気度に疑問符も付く中、広域連合に打つ手はあるのか。困難な道のりが続く。
(黒田勝俊)
【関西広域連合の概要】
加入する2府6県の人口は計2205万人(2015年国勢調査)で全国の17%を占め、オーストラリアに匹敵。総生産額84兆円(13年度県民経済計算)も全国の17%でオランダと並ぶ。大阪にある本部の専任職員は33人(16年11月現在)のみで、防災や医療、観光など分野ごとの事務局は各府県市職員との兼務が基本。議会議員(定数39)は各府県市議会から選出する。事務効率化のため構成府県の一部を対象に、調理師や准看護師などの資格試験や免許交付も一元化して行っている。
3.おんな城主直虎で注目、浜松の“県民性”は静岡よりなの? 愛知よりなの?
(2017年1月17日 THE PAGE)
柴咲コウが女性戦国大名井伊直虎を演じる今年のNHKの大河ドラマ「おんな城主直虎」。物語の舞台となっている浜松市は、自主独立の気概が強く、静岡県内でも、独自の文化や気風を築いてきた。江戸時代の浜松藩は幕閣のエリートを多数輩出し、1871年(明治4年)から1876年(同9年)までは、浜松県も存在した。距離的に県庁所在地の静岡市と隣県の大都市・名古屋市のほぼ中間にあり、愛知県東部との結びつきも強い。そんな歴史的、地理的背景があるためか、浜松の“県民性”は「静岡よりなのか愛知よりなのか?」といった議論もちらほら。
道州制が実現したら、浜松は名古屋につく?
浜松市を含む静岡県西部と愛知県東三河は、合わせて三遠(さんえん)と呼ばれ、Bリーグの三遠ネオフェニックスは、豊橋市に加え浜松市内でホームゲームを開催している。名古屋方面に進学する学生も多く、「道州制になれば、浜松は名古屋につく」と推測する識者もいる。長野県南部の南信州と合わせて「三遠南信」とも称され、3地域の首長や関係者が一同に集まる三遠南信サミットも毎年開催されているほどだ。
静岡県の方言を研究する富山昭さんは「西日本と東日本の方言の大きな境が浜松市の東側の掛川市や袋井市だという説があります。そうすると浜松市は大きく分けて西日本になります。三河地域の代表的な語尾の方言『じゃん、だら、りん』のうち『じゃん、だら』は静岡県西部でも用いますし、長野県南部でも使われる「だに」も、代表的な遠州弁です」と説明する。
「やらまいか」の起業家精神
「やってみよう」というチャレンジ精神を意味する「やらまいか」という方言で知られるように、企業家精神も旺盛だ。江戸時代後期の綿栽培が織機製造業を生み出し、その技術がピアノ、バイク、自動車産業に受け継がれていった。ホンダやスズキ、ヤマハの創業地で、トヨタグループの創始者豊田佐吉も隣の湖西市出身。さらには、航空宇宙産業の集積地として国が愛知県、岐阜県を中心に指定したアジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区 に、静岡県内の市町で唯一浜松市が入っている。
出世の街をPR
企業家精神に溢れた町と天下統一を果たした徳川家康にあやかり、浜松市は1月8日、大河ドラマの放送に合わせ、1年間の期間限定で「出世の街・浜松」を体感できる「浜松出世の館」もJR浜松駅近くにオープンした。同館を運営する浜松市の広報担当者は「数年前から、出世の街をPRしてきた。県内だけでなく、県外からも多くの方に訪れてほしい」と期待を寄せている。
県境や市境は人間が定めたいわば便宜的なもの。静岡県の西端付近にありつつも、ドラマ同様、東の静岡、西の名古屋、あるいはさらに広く、日本全体や世界の動きを両目で見据え、自らのポジションをしっかり確立するしたたかさこそ、浜松っ子のアイデンティティなのかもしれない。