最近の注目情報詳細2016年11月)

 

 

1.道州制法案、2日に提出=維新

201611月1日 時事通信)

 日本維新の会の馬場伸幸幹事長は1日の記者会見で、道州制を導入するための手続きや時期などを定めた導入法案(『道州制への移行のための改革基本法案』)などを2日に参院に提出すると発表した。維新は今国会で議員立法100本提出が目標で、2日の25本を加えると、提出法案は49本に達する。

 道州制法案以外では、消費税増税を凍結する法案や、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対応するため、治安出動と海上警備行動の迅速化を盛り込んだ国境警備法案なども提出する。

 

 

2.【九州を一つに】 龍造寺 健介さん

20161113日 西日本新聞/提論)

◆次世代向け議論深めよ

 

 地方自治を巡る議論で道州制がたびたび登場する。道州制は、都道府県を廃止し全国に10程度の道や州を置き、外交や防衛などを除き、税財源や権限を国から地方に移管する制度だ。古くは第2次世界大戦前に州庁設置案があり、近年では、2006年に地方制度調査会が3通りの区割り案を提言した。

 

 前回、「九州出島化構想」を提案した。ステップを踏み、できるだけ早く九州が一つになることが大切だと私は考える。なぜか。それは次世代に元気な九州を残すためだ。

 

 ロシアのように中央集権体制を強めると大改革ができず、地方は置き去りになる。中国は経済的な一定の権限を地方に渡し、地方は必然的に自ら動いた。

 

 九州は支店経済だ。東京本社にぶら下がっている。中央依存の、いわゆる「1割経済」に甘んじず、九州の人が自分たちで動くことが重要だ。このままでは人口減やアジアの成長の中で九州は埋もれていく。長期衰退の道を進む。次世代はもっと厳しい時代になる。そんな九州を彼らに残してはいけない。

 

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 道州制は、知事の人数が激減するから知事は前向きになりにくい。県単位の利権もある。マスコミも含め弊害を指摘する声もあり、議論が前に進んでいない。

 

 しかし、地方創生の流れがある今が好機で、議論を深めるべきではないか。私たちの世代で大きな変化を起こすことが、九州が生き残る唯一の道だ。九州がまとまって産業や文化の交流をすれば、成長するアジア経済圏の中で九州は自立できる。九州はアジア経済圏の中心になりうる。

 

 道州制に向けて、いきなり権限を全て地方に移さず、ステップを踏むことを考えてはどうか。まず九州の知事が一緒に行動する。九州7県が一つにならずとも、隣県合併や近県連携があってよい。長崎と佐賀、熊本と鹿児島、宮崎、福岡と大分など段階的に自治体連携を強める考え方だ。

 

 既に九州には、知事会と経済団体による地域戦略会議や産業競争力会議などの組織がある。こうした組織でさらに道州制のメリットを勉強し、九州観光推進機構のように九州がまとまる利点がある分野は、道州制を待たずに実施したい。

 

 国の出先機関を一つにまとめた「九州府」を置き、その長官が各知事の意向を国に要望する方法もある。知事と経済団体、女性団体、教育関係者などで構成する「九州議会」を設立し、そこで九州の私たちのあるべき姿や外資の取り込みなどを議論し、そのための権限移譲を長官が国に具体的に要求するのだ。

 

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 こうした議論はメンバーが替わると頓挫する。九州経済連合会などでもトップの意志があっても、その周りに出向者が多いと志が続かない。だから「九州府」の長官には、九州に骨をうずめられる人、腰をすえて取り組むリーダーシップが必要だ。

 

 九州内の銀行は、県境を飛び越えさっさと経営統合している。統合は痛みを伴うこともあるが、人口減や高齢化の中で生き残るには力を合わせることが大前提だ。県や市町村単位で頑張っても無理なことも多い。

 

 道州制では地方の税収不足を指摘する人もいるが、財源や権限の地方移譲で、九州は独立性を発揮できる。外国企業が九州に投資しやすい環境を独自に整え、投資したい島、行ってみたい島になれば、外資は九州で税金を納める。

 

 九州は連携や合併のメリットを積み上げ、地場企業も生き残りを懸けて各県を引っ張るべきだ。次世代を見据えた強い九州を確立するために、やはり九州を一つにする必要がある。

 

【略歴】1960年、東京都生まれ。84年米カリフォルニア美術大卒。米国で飲食店を16店経営した後、2005年に本多機工社長。60カ国以上にポンプを出荷し、経済産業省ものづくり大賞で優秀賞受賞。九州経済連合会国際委員会副委員長。

 

 

(参考)

【「出島化構想」】 龍造寺 健介さん

2016年9月4日 西日本新聞/提論)

◆九州特区で世界に発信 

 

 九州の中小企業を取り巻く環境は激変している。少子高齢化が進み、経済のグローバル化の壁にぶち当たっている。一方で、日本の工業製品だけでなくアニメやゲーム、伝統工芸、サービス分野に対して、外国の年配者も若者も尊敬してくれている。地方への興味も大きくなっている。

 

 そうした環境変化の中で、九州は本気で国際化しないといけない。国内外から九州は特別な島、日本で一番元気な島だと評価されるようになりたい。

 そこで「九州出島化構想」を提言する。九州を次世代に残すため、九州全体を特区とし、時間がかかっても着手すべきことを提案したい。

 

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 まずは外国人が訪れたい島になるための交通インフラの整備だ。格安航空会社(LCC)の乗り入れを促進すべきであり、そのためのハブ空港が必要だ。かつて九州国際空港の建設論議があったが、やはり国際路線用の24時間型空港を佐賀県辺りに建設し、リニアモーターカーのような高速鉄道で福岡市や北九州市などと結ぶべきだと考える。

 

 次に高速道路だ。最低でも片側2車線で、九州一周や九州横断をできるように整備したい。ドイツのアウトバーンのように直線が多い区間は速度無制限とする。外国人客がレンタカーで九州各地に行けるように、彼らには自動料金収受システム(ETC)の利用は無料にしてはどうか。

 

 訪日客のレンタカー利用は事故の心配もある。ならば、彼らが運転する車のナンバープレートの色を赤などにし、外国人と識別できるようにすれば、周囲の日本人ドライバーも気を配って運転できる。こうして九州とアジア、世界が交流するための抵抗を一つずつなくしていくべきだと思う。

 

 九州各地の伝統芸術文化を日常的に外国人客に紹介する施策も必要だ。しかも、伝統文化に触れてもらう仕組みをビジネスとして成り立たせる必要がある。

 

 中国の雑技やニューヨークのミュージカルは、いつ行ってもやっている。大分県に拠点がある和太鼓集団「TAO」の常設劇場建設や、福岡県にある太宰府天満宮での能の披露などにより、言葉の壁を乗り越えて九州の物語を伝えたい。

 

 もてなしも大切だ。海外の富裕層向けの観光地開発や標識の多言語化、イスラム系の外国人のためのハラル認定レストラン拡大も課題だ。Wi−Fi(ワイファイ)を使ってスマートフォンに情報発信し、例えば標識にスマホをかざせばすぐに周辺情報を入手できるようにできないか。

 

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 教育分野でも外国人を引きつけるための求心力が必要だ。スイスは国際人材やエリートの育成を輸出産業と位置づけている。代表例は「スイス・ラーニング」だ。政府の支援も受けた民間が2006年に設立した。ホテル学校の場合、スイスの一流ホテルが実習の場になっている。

 

 九州ならば、その特色を生かして外国人が学べる漫画・アニメ学校があっていい。また、一流料理店に弟子入りして皿洗いから始めなくても、和食の基礎が学べる外国人向けの専門学校があれば、日本の良さを海外に輸出する人材を育てられる。世界中の日本ファンを九州に呼び込むために、九州特区で学ぶ外国人には特別なビザを発給しても良いではないか。

 

 日本の特区は、内向きのものが多い。かつての長崎の出島のように、九州の産業界のリーダーシップと政府の協力を得て、九州をひとつの「出島」として特区にできないか。「九州」をブランドとして確立させて、九州の本物をきちんと世界に発信していきたい。