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1.【論点整理・日本国憲法】 地方自治 より広域、道州制が浮上 「改憲不要」指摘も

2016820日 毎日新聞)

 現行憲法は、大日本帝国憲法にはなかった地方自治に関する規定を設けた。その総則とも言うべき92条「地方公共団体の組織および運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」は、連合国軍総司令部(GHQ)との折衝の中で日本側が提案した。

 

 「地方自治の本旨」は住民自治と団体自治だと考えられている。地方公共団体に議会を設置し、首長と議員を直接選挙するという93条は住民自治を、条例制定など地方公共団体の権能に関する94条は団体自治を、それぞれ担保したものだ。それでも「本旨」の概念があいまいだという批判はある。

 

 日本の地方自治は市町村と都道府県の2層制を採用しているが、憲法がこれ以外の形を許容するかどうかという点も議論の対象になってきた。近年は、環境や地域経済など都道府県の枠を超えた問題の増加に伴い、より広域の行政システムとして道州制が注目を集める。衆院憲法調査会(2000年設置)では「道州に事実上の主権を担わせることで大胆な行政改革ができる」などの賛成意見が多かった。おおさか維新の会は憲法改正のテーマとして道州制を含む統治機構改革を掲げる。

 

 ただ、道州制の設計は簡単ではない。おおさか維新は「道州」と「基礎自治体」の2層制を主張するが、一方には「地方公共団体の規模が大きくなれば、住民の声が反映されにくくなる」という慎重論がある。課税権や立法権を道州に移譲する場合、「道州議会」の規模や権限、中央省庁再編などが課題として浮上するだろう。

 

 石破茂地方創生担当相(当時)は3月、国会で「現行憲法のままでも道州制は不可能ではない」と答弁した。学説的には石破氏のような見解も有力だ。

 

 増田寛也元総務相らによる有識者会議が14年に発表したリポートによると、40年には全国自治体の約半数にあたる896市区町村が消滅する可能性があるという。少子高齢化や東京一極集中が続けば、都市と地方の格差はますます拡大し、地方自治の土台は大きく揺らぐ。現実を踏まえた憲法論議が求められる。

 

 

2.【施光恒の一筆両断】 「合区」が郷土愛を損なう

2016年8月25日 産経新聞)

 全国知事会は8月23日、先の参院選で導入された「合区」について、都道府県ごとの意思が国政に反映されなくなるとして、次回の参院選から見直すように国会に要望しました。「合区」とは、隣接する2つの県を1つの選挙区に統合するものです。「一票の格差」の是正のため、人口の少ない地方の議席を減らし、人口の多い都市部により多くの議席を割り振ろうという考えから来ています。

 

 合区の見直し(解消)には、私も賛成です。一つの理由は投票率が大幅に低下したことです。合区によって「徳島・高知」「鳥取・島根」の2つの選挙区が誕生しましたが、このうち高知、徳島、鳥取は過去最低の投票率を記録しました。特に高知、徳島の投票率は、全都道府県の中でそれぞれワースト1位と2位でした。

 

 こうした投票率低下は当然でしょう。選挙において投票しようという動機は、郷土意識に根差すところが小さくありません。地元の政治を良くしたいという気持ちに由来するのです。郷土意識には都道府県や市町村の枠組みは大切です。10年ほど前に、いわゆる「平成の大合併」のため市町村の統廃合が進みました。この平成の大合併でも、投票率低下がみられたことは実証研究で明らかにされています。県のまとまりを取り払い、統合する合区も、われわれの郷土意識を損ない、投票意欲を失わせます。

 

 さらに言えば、都道府県の枠組みをなくしてしまおうという道州制論議の危うさも指摘できるでしょう。郷土意識の核である都道府県や市町村の枠組みを下手にいじり、行政単位を大きくすることは、政治に対する当事者意識の低下を招き、政治的関心を喪失させる恐れがあります。日本の民主政治の基礎を揺るがす可能性も否定できません。

 

 そもそも今回の合区をめぐる議論、あるいは一票の格差の是正をめぐる議論で奇妙なのは、根本的問題が論じられていないことです。都市部への人口集中を生じさせてしまう現在の地方軽視の政治のあり方という問題です。

 

 日本の国柄の一つは、郷土色が強く、多様な地域文化が存在することです。しかし最近は「シャッター街」という言葉が表すように、地方は元気がありません。1990年代の後半以降、公共事業を大幅に削減したことや、グローバル化の影響で地域の雇用を支えていた工場が海外に移転したことで、地方経済は悪化する一方です。「地方創生」を掲げているものの、安倍晋三政権も事実上、地方軽視の政治を進めています。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が発効すれば農業も衰退し、地方経済がさらなる打撃を被るのは目に見えています。

 

 一票の格差の是正にこだわる前に、都市部への人口集中を引き起こす現在の政治の進め方を再考することが必要です。このままでは、国土の不均等な発展、都市部と地方との経済的格差の拡大が進み、日本は歪(いびつ)な国家となってしまいます。各地の祭りなどの民俗芸能も廃れ、日本の文化や伝統の重要な構成要素の多くが消失する恐れもあります。

 

 安倍首相は愛国心を重んじる保守の政治家のはずです。健全な愛国心とは身近な郷土愛からつながっていくものでしょう。だとすれば、もっと地方に配慮した政治を行う必要があります。一票の格差の拡大という問題は、合区のような副作用の多い対症療法で対応すべき問題ではありません。都市部ばかりを肥大させ、その他の地域の荒廃を招く現在の政治のあり方に対する警鐘として捉えるべきなのです。

 

 

3.民進代表選、3候補道内入り

2016年9月11日 北海道新聞)

 地域主権の推進について、前原氏は民主党政権時代の地域主権改革で柱に据えた一括交付金制度に触れ、「もう一度戻すことが大事。最終的には道州制が目指すべき分権の姿だ」と主張。蓮舫氏も一括交付金の重要性を訴えた上で「財源と税源、行政サービスをしっかり分権する」と力を込めた。玉木氏は「国の出先機関を統合し地方庁をつくる。地域の声をもっと予算や制度に反映させやすい仕組みにする」と提案した。