最近の注目情報詳細(2014年5月)
1.道州制法案 提出できる状況でない
(2014年4月24日 信濃毎日新聞/社説)
今国会への提出を検討している道州制法案を、自民党は撤回した方がいい。法案の名称を変えたところで理解は得られまい。
全国町村会が法案への反対運動を強めている。全国知事会は内容の修正を求めており、長野県を含む8県の知事は提出の見送りを与党に要請した。自民党内でさえ、反対論や慎重論がむしろ目立っている。
一部の首長が推進を求めてはいる。が、道州制移行後の地方自治のイメージが一致しているかどうか、はなはだ疑問だ。
道州制は都道府県を廃し、10程度の道や州に再編する構想。推進する側は、行政の効率化や地方分権が進むと主張する。東京一極集中が解消され、地方経済の活性化につながるとの意見もある。
一方、全国町村会などは「州都」に経済や人口が集まり、都市部と農村部の格差が広がると訴えている。市町村の役割が増えるのに伴い、再び合併を強制されるという懸念も強い。
制度の是非を話し合うための青写真は何ら示されていない。
自民党の道州制推進本部が用意する法案は、有識者や国会議員、自治体関係者らで「国民会議」を設け、制度を練ると規定する。要するに“丸投げ”だ。
推進本部の今村雅弘本部長は「今回の法案は道州制導入を決めるものではない」と強調している。自公に加え、野党の多くが道州制に賛同している。法案が提出されれば、一気に具体化することになりかねない。
どうしてもというのなら、法案を出す前に制度内容を示すべきだ。省庁の権限をどこまで縮小するのか。国と地方の役割や税源をどう分けるのか…。道州間や市町村間の財政格差を調整する仕組みも求められる。
国民会議なら法案を出す前でも設置できる。法制化された「国と地方の協議の場」を活用するのもいい。何より住民に論点を分かりやすく公開し、意見を聴くことが欠かせない。
現行制度でもできることはたくさんある。地方が求めている権限や財源の移譲を着実に進め、自治体間の自由な連携を促す仕組みを整えたい。行政の効率化をうたうなら、遅れている国の行財政改革を断行しなければならない。
地方の自立的な営みを後押しする政策の先に、広域化の必要が生じれば、道州制をめぐる議論は自然と高まるはずだ。地方自治の将来を決めるのは地方自身であることを忘れないでほしい。
2.地方分権改革、7割が評価 京都・滋賀47首長
(2014年5月3日 京都新聞)
1993年から本格化した地方分権改革の成果について、京都新聞社が2日までに京都府と滋賀県の知事、市町村長にアンケートしたところ、7割が国と地方の関係を上下・主従から対等・協力に近づけたことを評価した。一方で、地方の税財源削減も検討する政府の方針を6割が評価せず、自民党が関連法案提出を目指す道州制に反対の首長は5割を超えた。分権に関する安倍政権の姿勢に懸念が高まっている。
アンケートは、分権改革が今国会中に見込まれる第4次一括法案の成立で節目を迎えるため、実施。京滋の首長全47人が回答した。
分権改革の総括については、34人が「評価する」「どちらかというと評価する」を選んだ。
国の事務を請け負う機関委任事務の廃止、国の規制を緩和する義務付けや枠付けの見直しなどを例に、「団体自治の分権はかなり進展」(京都府)、「地域の自主性や自立性が高まった」(京都市、京田辺市)とした。
税財源については、政府が検討する地方税を含めた税制改正について、30人が「評価しない」「どちらかというと評価しない」と回答。地方税の法人住民税で一部を自治体間の格差是正のために国税化したり、実効税率の引き下げを検討しているため、「分権の流れに逆行する。メリットが不明瞭だ」(大津市)とする意見が相次いだ。
道州制への「反対」は25人で、町村は17人全員が反対だった。「分権が進むかのような議論を危惧する」(滋賀県)、「自治体の格差が拡大する」(和束町)、「小規模な町村は合併を強いられる」(大山崎町)と警戒感が強く、「賛成」は8人にとどまった。
3.『道州制推進基本法の早期制定を求める』の要請文を菅官房長官に提出
(2014年5月14日 日商ニュース)
5月14日、渡邊 東京商工会議所 地方分権推進委員会委員長、畔柳 経団連副会長、柏木 経済同友会副代表幹事、藤原 関経連理事が、菅官房長官を訪問し、去る3月31日に経済10団体連名で取りまとめた『道州制推進基本法の早期制定を求める』の要請文を直接手交し、同法案の早期国会提出を訴えた。
○『道州制推進基本法の早期制定を求める』要請文
⇒ http://www.jcci.or.jp/kikaku/20140514dosyu/seitei.pdf
4.「早急に統治機構見直しを」 前橋で道州制論議 東国原氏訴え
(2014年5月18日 産経新聞/関東)
前橋青年会議所(番場太一理事長)は17日、同市南町の市民会館で道州制に関する講演会とパネルディスカッションを行った。ゲストで元宮崎県知事の東国原英夫氏は「日本の人口が1億人を切る前に国の権限を地方に移譲し、二重行政を解消する道州制導入など、統治機構の見直しを急ぐべきだ」と訴えた。
東国原氏は、知事時代に牛の口蹄(こうてい)疫発生で対応に関わった経験を紹介。「家畜保健所など専門知識はすべて地方にある。地元に任せてもらいたいと何度も思った」と振り返った。
道州制が導入されて「北関東州」ができる場合の州都のあり方について「さいたま市などが経済、前橋や高崎などが行政の中心になるという方法もある」と提言した。
また、地域の魅力を高める方法として「ゆるキャラでも何でも、地域間の競争から逃げずに勝ち抜くことだ」と述べた。
5.【道州制導入】地方切り捨てに反対
(2014年5月20日福島民報/論説)
県内の自治体が、自民党の道州制導入をめぐる論議の行方に警戒を強めている。中でも46の町村からなる県町村会と県町村議会議長会は「地方切り捨て」につながるとして強く反対、4月下旬には要望書を本県関係の自民党国会議員に提出した。都道府県に代わる道州制の導入で懸念される市町村合併が強制されれば、農山村が多い町村は道州との距離が遠くなって住民自治が急激に衰退する心配があるからだ。
佐藤雄平知事も4月、道州制推進基本法案の今国会提出を見送るよう要請した。自民党には見切り発車しないよう求めたい。
道州制はかなり以前から何度も論議されてきたが、県町村会などは自民党の中に道州制推進基本法案を国会へ提出する動きがあると注視している。道州制になれば、国の権限や税源をかなり道州に委譲するため地方分権が進むなどの利点があるとされる。そうした恩恵を受けるのは税源が豊かな東京、大阪などの大都市を抱えるところで、税源が乏しいところは財源不足が深刻となって道州間の格差が一層広がる恐れがある。
道州制は「基礎自治体」で構成するという案がある。これまでの市町村の事務に加えて都道府県が担ってきた事務を受け継ぐことになる。都道府県の事務を継承する職員を確保できない、規模の小さい自治体は「基礎自治体」にはなれず、結局市町村合併を迫られることになる。
仮に東北州が誕生した場合は、国や民間企業の出先機関が集中している宮城県の仙台市が州都になるだろう。福島県は周辺部となって県庁所在地の福島市が寂れ、東北州内での格差が一段と広がる。
県町村会は、4年前まで推進された「平成の大合併」の点検、検証がまだ済んでいないのに、再び市町村合併が進められる道州制導入に強く反対する。平成の大合併では県内でも合併自治体の中心部から外れた周辺部の活力が低下している事例があるためだ。
「日本創成会議」の分科会が5月8日に発表した試算によると、30年間に人口が減り続けて、かなりの自治体が将来消滅するとの衝撃的なデータが明らかになった。それなら人口20万人を超える「基礎自治体」への再編を急ぐべきとの主張も出てきそうだが、市町村合併が再び進めば周辺部の人口は減少が加速化し、一気に衰えるだろう。
もちろん、反対一辺倒では解決できない。それぞれの自治体が活力ある地域にするために知恵を絞り汗を流す必要がある。
(佐藤 晴雄)
6.道州制法案、今国会提出見送り=党内に慎重論−自民
(2014年5月20日 時事通信)
自民党は20日、道州制推進基本法案の今国会提出を見送る方向で調整に入った。基本法案をめぐっては、新たな市町村合併につながることを心配する全国町村会などが強く反対。来春の統一地方選を控え、党内にも慎重論が広がり、意見集約が難航していた。
基本法案は、道州制について、外交や防衛などを除く国の権限を新たに設ける道州に移譲し、道州の下に置く基礎自治体が現在の都道府県と市町村の事務を処理するなどと規定。具体的な制度設計は内閣府に設ける「道州制国民会議」で議論する仕組みを打ち出した。
ただ、道州制の導入には全国町村会などが「市町村合併を前提にしている」と反対。自民党内でも若手議員を中心に慎重な検討を求める意見が相次いでいた。
自民党は、昨夏の参院選公約に「道州制の導入を目指す」と明記している。秋に想定される臨時国会などへの基本法案提出を目指し、道州制推進本部(今村雅弘本部長)を中心に今後も議論を続ける方針だ。
道州制については経団連など経済界が早期制定を要望しているほか、一部の知事が導入を求めている。