最近の注目情報詳細20088月)

 

1.道州制懇談会、税制委を設置 4カ月ぶり議論再開

2008716日 朝日新聞)

 増田道州制担当相の私的懇談会「道州制ビジョン懇談会」(座長=江口克彦・PHP総合研究所社長)が16日、約4カ月ぶりに議論を再開した。18年までに道州制に完全移行するとした3月の中間報告に基づいて、税財政や道州の区割りの具体化に入る。

 

 この日は税財政を検討する専門委員会の設置を江口座長が報告。メンバーは黒川和美・法政大大学院教授、古川康・佐賀県知事ら8人で、懇談会メンバーの堺屋太一氏も加わる。国、道州、市町村が業務に見合った財源を確保する仕組みを1年かけて議論し、09年度内に予定される最終報告に盛り込む。

 

 区割りについては「区割りばかり注目されると、役割分担の議論が置き去りになる」との意見があり、小委員会を設けて慎重に議論を進めることにした。増田氏は「まずは国民の理解、関心を深めることが必要だ。道州の中で自治体が自立できるように、地方分権もしっかりと進めたい」と述べた。

 

 

 

2.「道州制は究極の構造改革」/御手洗会長、日本経団連の考え強調

2008731日 日本経団連タイムス No.2915

 

日本経団連と経済広報センターは16日、仙台市において、東北経済連合会(東経連)、内閣官房との共催により「東北の未来と道州制を考えるシンポジウム」を開催した。日本経団連は、道州制導入に向けた国民的な気運を高めるべく、昨年度から全国各地でシンポジウムを開催しており、今回は今年度の1回目のシンポジウム。当日は、日本経団連および東経連の会員や、経済広報センターの社会広聴会員、地方自治体関係者、一般参加者など、約430名が参加した。

 

幕田東経連会長、御手洗会長主催者あいさつ

幕田東経連会長は、まず地方分権の推進が不可欠であり、東北地域の活性化につながり、地域の人々にとっても真の豊かさを実感できる道州制であれば賛同するとし、高速交通体系などの社会資本整備や医療・福祉などの公的サービスの地域間格差を道州制移行前にできるだけ解消することが不可欠であると述べた。

続いて御手洗会長は、道州制は地方分権改革や国・地方を通じた行財政改革などを含む「究極の構造改革」であるという日本経団連の考えを改めて強調した。また、ベルギー、スイスなど欧州の中規模諸国とほぼ同程度の人口や経済規模を持つ東北が一体となって産業振興に取り組めば、北東アジア経済圏の中心になることも夢ではないとの期待を示した。

 

基調講演

江口・道州制ビジョン懇談会座長は、東京のみが繁栄する状況が続く中央集権体制を打破しなければならないと指摘。2010年3月までにまとめる道州制ビジョン懇談会の最終報告では、税財政制度のあり方や区割り、基本法の案についても示したいと述べた。

 

パネルディスカッション

続くパネルディスカッションには、増田寛也・道州制担当大臣、村井嘉浩・宮城県知事、田村秀・新潟大学教授、池田弘一・日本経団連道州制推進委員会共同委員長がパネリストとして参加。「道州制で描く日本と東北の未来」をテーマに、各界の議論・検討状況や、道州制で達成される姿、課題や決意表明などについて、佐々木恭之助・東経連副会長をコーディネーターに、活発な議論が行われた。

増田大臣からは、道州制の下では、地方議会の条例制定権の拡大や、基礎自治体の行財政能力の強化、東北の自動車産業などのような経済産業振興が可能になるとの発言があった。

また、池田共同委員長は、東北大学と企業との産学連携や広域的な観光振興は、道州制導入でより効果的になると述べた上で、2010年までに「道州制推進基本法」(仮称)を制定するよう増田大臣に要望した。

最後に、中村邦夫・日本経団連副会長・道州制推進委員長があいさつし、今こそ道州制の議論を総論から各論へ進めるべきであり、道州制導入による国民生活へのメリットはもちろん、区割りや消費税の問題について避けずに議論していくことが必要と述べてシンポジウムを締めくくった。

 

 

 

3.「関西州実現に向けて驀進」就任から半年の橋下知事が決意表明

200887日 産経新聞)

大阪府の橋下徹知事は6日、就任から半年を迎えた。この日の定例会見で、「夢や希望を達成しておらず、(事業や予算を)削ってばかりで、充実感も達成感もない。まだ、走り続けている状況」と振り返り、「関西州を実現するまで驀進(ばくしん)する」と、あらためて決意を示した。

 

 老朽化に伴う府庁舎整備案について、橋下知事は「議会では、耐震化が適当となったが、果たして道州制を意識してのものだったのか。関西州を視野にもう一度、議論させてほしい」と大阪市の第三セクター「大阪ワールドトレードセンタービルディング」のビルへの移転案も議論する必要性を訴えた。

 

 また、「京都や奈良、神戸があり、これほどポテンシャル(潜在能力)の高い地域は世界にもない。(道州制を導入した場合)関東は北と南に分かれると思うので、そうすれば関西が一番になり、東京一極集中が打開できる」と持論を展開した。大阪空港の廃止に言及したことについても「関西について考えるとき、利便性などではなく空港をどのように使うのか。タブー抜きで議論につなげたい」と道州制をにらんだ問題提起だったことを明かした。

 

 一方、道州制導入をめぐって近畿各県の知事の間で意見が分かれていることについて、橋下知事は「知事が道州制を実現するのではないし、知事同士では話はまとまらない。僕がメッセージを発する相手は府民や国民。政治、行政に関心のない人に訴えていきたい。ただ、僕が関西州の知事になりたいわけではない」と述べた。

 

 

 

4.地方分権議論混乱 政府の2会議、主導権争い 自民も参戦

2008719日 産経新聞)

■道州制前提か、権限移譲か

 

 地方分権の議論をめぐり政府内の有識者会議同士による主導権争いが表面化してきた。分権改革を議論している「道州制ビジョン懇談会」(座長・江口克彦PHP総合研究所社長)と「地方分権改革推進委員会」(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)が道州制実現が前提か、それとも具体的な権限の地方移譲が先かをめぐって対立しているのだ。さらに自民党が7月に具体的な道州の区割り案を提示したことで混乱に拍車がかかり、地方分権論議はまた裂き状態に陥りつつある。

 

 17日の分権改革推進委の会合では、丹羽委員長自ら「地方分権をやらずして道州制はありえない」と述べるなど、道州制を前提にした議論への批判が噴出した。分権委は年末の2次勧告に向け、国土交通省地方整備局など8府省の出先機関の廃止を含めた見直しを進めており、分権委の正当性を強調する思惑もあったようだ。

 

 丹羽氏は「権限移譲の問題を片づけないと一歩も前に進まない。区割りの議論だけで終わっては何の意味もない」とも語り、区割り案を提示した自民党の道州制推進本部(本部長・谷垣禎一(さだかず)政調会長)をも牽制(けんせい)してみせた。西尾勝委員長代理も「あくまでも47都道府県制度を前提にした地方分権を考えるべきだ」と主張した。

 

 これに先立つ16日には、道州制ビジョン懇が約4カ月ぶりに議論を再開し、税財源のあり方と区割りを検討する2つの委員会設置を決めたばかりだった。道州制実現に向けた世論喚起を目指す江口座長は、「地方分権の先に道州制があるのではない」と反論し、こう指摘する。「地方分権を進めても今の中央集権は変わらない。官僚も族議員も肝心な分権に抵抗するからで、丹羽氏は気の毒だ」

 

 ただ、分権委が新地方分権一括法の提出を目指しているのに対し、ビジョン懇は道州制担当相(増田寛也総務相)の私的懇談会にとどまっており、「格下」の印象はぬぐえない。平成30年までの道州制実現は打ち出しているものの、ビジョン懇内でも「税財源の議論を先にやらないと具体的な区割りはできない」との意見があり、青写真を描き切れていないのが現状だ。

 

 一方、自民党道州制推進本部は政治主導の道州制実現を目指し、いち早く区割り案を提示した。幹部の一人は、「政治家は有権者の声を直接聞いているから現実的な道州制を考えられる。専門家だけのビジョン懇の議論は机上の空論だ」と批判する。

 

 ただ、幹事長経験者の麻生太郎、中川秀直両氏が相次いで道州制実現を提言するといった動きはあるものの、推進本部の会合の出席者は幹部ら特定議員にとどまっているケースが多く、道州制に対する党内の関心は高いわけではない。

 

 いずれの組織も地方分権推進を目標とし、税財源のあり方などで提言するという着地点では一致しているが、このままでは「分権論議を交通整理しないと、政府・自民党の混乱を印象づけるだけだ」(閣僚経験者)といった懸念が現実のものとなりそうだ。